お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています
その会見を、紗良は自宅のリビングで見ていた。
テレビの前のソファに座り、両手を膝に添え、じっと画面を見つめている。
隣には橘、その背後には松浦と旗野が控えていた。

緊張した沈黙の中、記者からの質問が続くたびに、紗良の指先がわずかに震える。

「……資料まで出すんだね。あの人らしくないやり方」

ポツリと呟く紗良に、松浦が軽く目を向けたが何も言わなかった。
橘もまた、彼女の視線を追うように画面を見ていた。

「覚悟を決めたんでしょう。娘さんを守るために」

旗野が低く呟いた。

紗良は、父の声に耳を傾けながら、まぶたの裏に数週間の出来事を思い浮かべていた。
襲撃、疑惑、疑念。信じたい人を信じる難しさと、揺れる心――。

それでも、今、父は真正面から言葉で戦っていた。
その背中に、かつてないほどの誇りを感じている自分に気づいた。

橘がふと、そっと横目で紗良を見た。
彼女が黙ったまま画面を見つめているのを確認すると、ごく自然な動きで、彼女のカップに紅茶を注ぎ足した。
言葉ではなく、態度で。
静かな連帯がそこにあった。
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