極上御曹司からは逃れられない運命でした
すると入り口の前で一人の女性がウロウロしているではないか。

ん?

んん!?

「凛花!」

凛花は振り返ると、俺を見るなり走り出した。

は?

俺に会いに来たんじゃないのか?

嬉しさと喜びと、驚きと戸惑い。

同時に頭の中でいろんな事が起こる。

「待てって!」

そして直ぐに追いついた。

「凛花! どうした? 何かあったのか?」

凛花を見ると泣きそうになっている。

ただならぬ雰囲気に喜んでもいられない。

「大丈夫か? まず中に入れ。な?」

凛花は首を横に振る。

「パ、パパが…」

そして震えながら涙を浮かべて俺を見上げる。

「親父さん? 海外にいる?」

凛花は少し震えながら頷く。

「パ、パパが…、事件に巻き込まれてっ…」

「なんだと!? 直ぐに行かないと! 命に別状は!?」

「わかんないっ…。ママも携帯が繋がらなくなっちゃって…。でも飛行機がすぐ取れなくてっ…、早くて明後日の便らしくて…。私…うっ…」

そう言って遂には俺の前では決して泣かなかった彼女が泣き出した。

「わかった。まず落ち着け」

見ていられず気づけば強く抱きしめていた。
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