両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
綺麗すぎる顔のせいか、冷たく見えていた顔の印象が笑うとガラリと変わった。
笑うと思わなかった人形が笑って、胸がドキッとした。
こんなの不意打ちすぎる……
さっと目を逸らした。

「それじゃあ、君だけのためにリサイタルをひらこうか」

椅子をもってきて、ピアノのそばに置いてくれた。
テーブル席じゃなく、楽譜をめくれるくらいの距離。
こんな近くで?と思わなくもなかったけれど、言われたとおりに黙って座った。
彼の指も表情も見えるくらいに近い。
すっと指を置いて、まるでピアノが生きているかのように鍵盤をなでて微笑む。
音を確かめるように一音鳴らす。
高く澄んだよく響く音を。
それだけでわかった。
彼は―――ピアニストなのだと。
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