両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】

「でも、唯冬……」

「大丈夫。本当に倒れそうなら、棄権しているよ」

「そう?」

嘘だった。
それでもコンクールには出たかった。
俺が他の子どもよりなんでもいいから、なにかできるってことを見せておきたい。
母親のためにも体調不良で棄権するわけにはいかない。
俺の体の弱さが原因で両親が喧嘩するのがわかっていた。
俺のせいで家族仲が険悪になるのは避けたい。

「無理なら、近くの大人に棄権することを言うのよ?」

「わかってる」

体調の悪さを母親に悟られないように足早に楽屋を出た。
舞台袖近くに用意された椅子に座り、息を吐く。
熱でくらくらする―――具合が悪いと気づいていたのか、他の出場者は俺を見ていた。
けれど、結局知らん顔して誰も声をかけない。
演奏前なのだから当たり前だ。
みんな自分のことで頭がいっぱいに決まっている。
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