両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
少しでも楽になりたくて、深く椅子に座ったその時、頭上に影ができた。

「あの……大丈夫?」

水色のドレスを着た女の子が立っていて、心配そうな顔でのぞきこんだ。
ドレスのふわりとした袖、髪には白い花の髪飾りをつけていて妖精みたいだった。
俺より年下だけど、身長が俺より高い。
なんとなく、それが嫌で目を逸らした。
この子のことはよく知っている。
天才少女と呼ばれている子だ。
コンクールでよく優勝している雪元千愛は他の子達からの視線を気にする様子もなく、俺に話しかけた。

「熱があるみたいよ」

ひんやりした指が俺の額に触れた。
冷たくて気持ちがいい。

「誰か呼ぶから、待ってて」

大人を呼びに行こうとした彼女の腕をつかんだ。

「大丈夫、弾けるから……」

小さい声で言ったのが聴こえたらしく、迷いながらも隣の椅子に座ってくれた。
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