両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
これ、ジュニアコンクールとか言ったら、面倒なことになってしまうかもしれない。
桜田さんの顔をみると期待に満ちたキラキラした目で私をみていた。
素敵なエピソードを期待しているに違いない。

「……カフェで会ったの」

「おしゃれな出会いですねー!」

そこまで私から聞き出すと満足したらしく、パン屋で買ったと思われるパンをおいしそうに食べていた。
ほっとして、ごま昆布のおにぎりを食べ、机の上に置いてあったスマホ画面をのぞくと唯冬からメッセージが入っていた。

『仕事が終わったら、カフェ『音の葉』に寄ってほしい。知久(ともひさ)が妹の無礼を謝りたいと言っている』

先日の楽器店の件だろうか――陣川結朱さん。
彼女はお兄さんに似た華やかな美人だったなと思い出した。
そして、私の過去を知る人。
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