両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
それに私が傷つかないように気をつかってくれたこともわかった。

「うん、笑った方が可愛いよ」

そう言った瞬間、さっと唯冬がメニューで知久さんと私の間を遮った。

「知久。これで話は終わったな。じゃあな。おつかれ」

「えっー!まだ俺は帰らないよ!」

「いや、帰れよ」

「ここまできたんだから、日替わりメニューを食べて帰るつもりだったし」

メニューで顔が見えず、声だけ聴こえていたけど、そのメニューの隙間から目をのぞかせて私に言った。

「よかったら、一曲聴かせてほしいなー」

「いえ、私は……人前で弾くのは……」

今日は前と違って、仕事帰りのお客さんや家族連れの姿がある。
聴かせるような演奏ではない。
しかもプロの二人に。
今の私は習い事ていどのレベルだと自分でもわかっている。
前みたいに弾けるようになるとは限らない。
頭に『失敗作』の文字が浮かんだ。
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