両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
でももし、このまま以前のように弾けるようにならなかったら、唯冬は私を嫌いになる?
私が『失敗作』だって気づいてしまったら?

「怖いなら、唯冬と一緒に弾いたら?」

「連弾か。千愛がいいなら、俺はいいよ」

「なにかあっても唯冬がなんとかしてくれるし、まー、失敗しても悪いのは唯冬だからね!」

「知久……」

「ブラームスの愛のワルツとかどう?」

カフェに置いてあった楽譜を差し出されてパラパラとめくる。
昔、先生と連弾をしたけれど、他の人と連弾したことはなかった。

「弾ける……けど」

弾けるだけでいいのだろうか。
躊躇う私に唯冬は微笑んだ。

「弾けなかったら、ソロで俺が最後まで弾く」

「……え、ええ」

「楽しみだなー!」

嬉しそうにぱちぱちと拍手をする知久さんは無邪気だった。
人前で弾くのは緊張する。
前はそんなこと思ったことがなかった。
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