両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「少しだったけど、俺は千愛と一緒に弾けて楽しかったよ」

あんなボロボロだったのにそう言ってくれるのはきっと唯冬だけ。

「また一緒に弾こう。今度は最後までね」

「ええ」

唯冬が幸せそうに笑うから、私はつられて返事をしていた。
実力の差も考えずに。
約束をしてしまった。
彼と一緒に弾きたいと思っている人は大勢いたのに―――
この時の私は気づいていなかった。
いろんなことを。
唯冬の存在が近すぎて、いつでも一緒に弾ける。
そんな簡単な気持ちで考えていただけで、ずっと先のことを考えることを忘れていた。
ただ目の前に唯冬がいる幸せだけがすべてだった。
私には。
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