両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
え、ええ?
どういうことなのかわからずに首をかしげた。
今の言葉のどこが悪かったのかわからない。
唯冬はがっかりしている。
励ましただけよね?

「え、えーと。クラシックもいいけど、ジャズも素敵でとてもよかったわ」

「まあね」

にこっと微笑んだ。
これはオッケーだったみたい。
謎が多いわね……

「千愛も弾きたくなった?」

「私はまだ人前では弾けるレベルじゃないわ」

自分の未熟さを知っただけ。
ブランクは大きい。
私が思った以上に―――

「うまく弾こうとしなくていい。ここはコンクール会場じゃないんだから。楽しめばいいんだよ」

「楽しむ?」

「そう。楽しんで、今を」

笑いながら私が手にしていた水のグラスと自分の水のグラスを鳴らし、軽い乾杯をしてから水を飲む。
もっと気軽にってこと?
私はお客さんを楽しませるなんて考えたことなかった。
正確に弾くものだと思っていたから。

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