両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「んー、そうだねー。やるなら早い方がいい。一日でもね」

知久さんはカラになったぶどうゼリーの容器をゴミ箱に投げ入れた。

「俺は知久達が言うようにコンクールに出場したほうがいいと思っている。妹に勝てばこの先、千愛の両親はおとなしくなるだろうからな」

「唯冬の両親もね。結局、大人が欲しいのは肩書なんだよ」

さあ、選んでと逢生さんはタイミングよく私に封筒を渡す。

「これは?」

「菱水音大受験案内」

コンクールの次は受験!?

「な、なんで逢生さんがっ!?」

「逢生!俺の荷物から勝手に持っていくな!」

唯冬のかばんからちゃっかり封筒を抜いたらしい。

「戻っておいでよ。千愛ちゃん」

「君はこちら側の人間だよ」

唯冬が二人を手で制した。

「選ぶのは千愛だ。千愛の判断に任せる」

私の手に大学の入学案内を渡して唯冬は言った。
戻るかどうか―――それはもう決まっていた。
唯冬と演奏してから、私はずっと音が鳴り響いていたのだから。
この胸の中に。
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