両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
二人はわかったとソファーから立ち上がり、案内してくれた。
外からかけれる鍵。
電気のスイッチ。

「中にピアノは?」

「ああ……」

俺のにこやかな様子にこれ以上なにもされないと安心したのか、愛想笑いを浮かべていた。
背後にまわり、二人の背中を冷ややかに見つめる。
俺はそんな優しい人間じゃない。
そう見せているだけだ。
本当に優しい人間はこんなことしないだろう?
―――ドンッと背中を突き飛ばし、部屋の中に二人を閉じ込めた。
胸ポケットから取り出した鍵で閉じ込めてやった。

「な、なにをするっ!」

「だして!」

電気を消すと悲鳴が聞こえた。
どんどんと部屋の中からドアを叩く音がしていた。
小さな千愛は大人ですら怖いと思うような暗闇に、一人閉じ込められてどんな思いをしていたのだろう。
手の中にある鍵を見つめた。
俺はその時の君を助けたかった。
できることなら。

「出さないか!」

「なにをするの!」

「こんなところに閉じ込めてどうするつもりだ!」

恐怖のにじむ声を無視し、ドアの前で言った。

「あなた達が千愛にしていたことですよ」

鍵をリビングのテーブルに置いた。
あのヒステリックな妹が帰ってきたら開けるだろう。
それまではそこにいればいい。
千愛が閉じ込められた時間に比べたら、それは短い時間だろうから―――

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