両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「君を教えていた先生は今や妹さんを教えているからね。まあ、君のご両親が妹さんの指導を頼んできたが、断ったせいでもある」

両親は私の時も有名なピアニストを何人も輩出している隈井先生にと考えていたけれど、それは叶わず、妹の虹亜もお願いしたとは知らなかった。
私も断られている。

「今ならその理由がわかった気がします」

「遅くなったが、いいかね」

「はい!」

優しく微笑んだ隈井先生はテーブルを見て言った。

「まあ、まずはこのごちそうを食べよう。体調管理は大事だよ」

そのセリフに唯冬を見た。

「俺の先生は隈井先生だよ。三年間ね」

なるほど。
どうやら、唯冬がもう一人増えたらしい。

「食べた後で君の一番弾ける曲を弾いてもらう。考えておきなさい」

心の準備はゼロ。
二人は楽しそうにしていたけど、私はそんな余裕はない。
『正確なピアノ』をさせないためなのかもしれないけど、せめて先生が来ることを言ってくれたらよかったのに。
唯冬と隈井先生の顔を見る。
厳しい練習を覚悟したのだった―――
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