両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「だいたいこんなの遊びでしょ?コンクールの練習もしないで信じられない!」

「虹亜は練習しなくていいの?」

見たところ、友達とショッピングの帰りらしくショップのロゴ入り袋をいくつも手にしていた。

「言われなくてもしてるわ!今日も帰ったらやるもの!」

「そうお互いがんばりましょう」

「このっ!」

手をふりあげた瞬間、さっと離れて避けた。

「虹亜。人を殴ったら、手が痛むわよ。やめたほうがいいわ」

今は虹亜が痛々しく見えた。
プレッシャーから逃げたくてショッピングに出掛けたり、友達とあって気を紛らわせていたのかもしれない。
両親から私に負けないように言われているに違いなかった。

「コンクールの本選で思い知らせてやるわ!」

そう言うと虹亜は店からでていってしまった。

「待ってよー!虹亜!」

「荷物どうするの!」

その後を女友達が追って行った。
虹亜はきっと不安でここにきた。
私がどんな演奏をするのか、気になっていたのかもしれない。
コンクールまであと少し。
残された時間で精一杯 やるしかない。
不安なのはお互い様。
店内を見回してお辞儀するとピアノの元に戻った。
淡いオレンジ色の日差しが店内を照らす。
静かな夏の夕暮れの中、再びカノンを弾き始めた。
この時間を楽しむように。
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