両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「いや、ですから。店の雰囲気にあった曲をお願いしたいと言っているんです」

「じゃあ。なんの曲ならいいっていうの!」

支配人が困ったように額の汗をぬぐった。

「ですから。その……」

「支配人。よろしければ、代わりに弾きましょうか」

「#渋木__しぶき__#さん!」

「たまたま友人達も一緒にいるので、よろしければ三人で」

「これは願ってもない!どうぞ!あぁ、君はもういいよ、帰ってくれて」

悔しそうに唇をかみしめ。虹亜は楽譜を床に叩きつけると店から出ていった。

「困った子だな」

楽譜を拾った。
どんな演奏をするのか聴きたくてきてみたが、ヒステリックで感情的。
曲によってはマイナスとなるかもしれない。
あの性格は。

「こうなるだろうってわかるお前が俺は怖いよ」

「そうか?」

「腹黒すぎ」

こいつら。
好き放題言ってろよ。
「なんとでも言え。支配人がディナーのペア招待券をくれるらしいぞ。女性と来たかったんだろ?よかったな、二人とも」

「言ったけどさ……」

「汚い大人だ……」

知久と逢生は諦めた顔で楽器を手にした。
二人ともせいぜい働いてくれ。
いつもお前らの面倒をみている俺のためにな。
二人に向かってにっこり微笑んだのだった。



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