両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
『みんなの期待を裏切ったんだぞ!』

ピアノが弾けなくなった私に父はそう怒鳴りつけたのを今も覚えている。
わかってる。
期待されて、それに応えられなかった私はいらない子。
孤独なのは私への罰。
バンッとロッカーの扉を閉めた。
ロッカールームで会社の制服を着替え終わると鏡を見た。
地味な事務員の制服から通勤着に変わったところで私の姿は劇的に変わらない。
通勤着は白シャツとネイビーのワイドパンツ。
暗くて付き合いの悪い女と一緒に働いている人達から言われていることもじゅうぶんわかっていた。
私は人付き合いも下手くそで仕事もすごくできるわけじゃないし、特徴もない。
結局、ピアノが弾けなくなった私は凡庸な人間で、それ以外はなに一つ得意とするものを見つけることはできなかった―――
神様は私にピアノの才能だけを与えてくれたのにそれが期限付きだったなんて、知らなかった。
最初から教えておいてよ、神様。
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