両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「千愛。弾きたい?」

私の指が動いているのを見て、唯冬がぽんっと頭を叩いた。

「いいよ。それじゃあ、俺のマンションへ―――」

そう言いかけた時だった。

「唯冬さん、逢生さん。来てたのね」

女性の声が唯冬の言葉を遮った。

「ああ、知久からチケットをもらってね」

「そう。私は兄さんと前半で共演していたの。飛び込みでね」

長い黒髪の綺麗な女の人だった。
紺のワンピースを着ていて、飛び込みと言ったけど、最初から演奏するつもりだったのは服装や身につけたアクセサリーで見てとれた。
その人は唯冬の背後にいた私を目にすると驚いたような顔をした。

「まさか、雪元千愛……」

「そうだよ。千愛。この子は知久の妹で陣川結朱。ピアニストだよ」

「唯冬さん、どういうこと?彼女はピアノをやめて、もう弾けないって聞いていたけど」

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