両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
唯冬はそばに立つとキャンディの包みのような和紙で包まれた丸いお菓子を見せた。

「口を開けて」

「く、口!?」

唯冬は紙をくるくるとほどき、指でつまむと唇に添えた。
な、な、なんでっ!?自分で食べれるのに……

「ん?」

混乱している私ににっこり微笑んだ。
観念して口を開けると、唯冬は親鳥が雛鳥にエサを与えるように上を向かせて唇に指を触れさせた。
ドキドキしているのは私だけかもしれない。
唯冬は表情を崩さず、目を細めて白い砂糖菓子を口の中にいれた。
小さな丸い砂糖菓子は雪みたいにスッと溶けた。

「甘くておいしい……これはなに?」

優しい甘さのお菓子は私の心に染みて、緊張が解けていく。

「千愛がピアノを弾けるようになるお菓子。弾く前に食べるといい」

そう言うと唯冬は笑いながら、砂糖菓子が入った銀の缶を置いて部屋からでていってしまった。

「……弾けるように」

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