両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
そうだと言えずにぐっと拳を握りしめた。
うつむいた私の隣に大きな影が立つ。

「俺とのデートだけど?」

ひょいっと私の肩に手を置き、頭上から顔をだしたのは唯冬だった。
ふわりと爽やかな香りがして、上を向くとにっこりと唯冬が微笑んでいた。

「ごめん。待たせた」

虹亜はえっ?と驚いた声をあげて手元のCDを何度も見、結朱さんは衝撃を受けた顔をしていた。

「唯冬さん……?デートってどういうこと……」

青い顔をして結朱さんは唯冬を見つめていた。

「俺は千愛と付き合いたいって思ってる」

私の顔が赤くなるのが分かった。
みんなの前で宣言しなくても……
唯冬が来てホッとした。
でも、それと同時に私は悲しいくらいに自分の無力さを呪っていた。
なにもできなかった自分自身を。
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