「逃げていいんだよ」と彼は言ってくれた。
シナリオ講座の翌日は図書館に本の返却に行った。
カウンターで本を返したあと、何となく心理学の本がある棚に行った。『恋愛の心理学』という本が目に留まる。
周囲に誰もいないのを確認してから本をそっと棚から取り出す。パラパラと何となくページを捲る。
へえー男性って視線を多く送ると相手のことを好きになる傾向があるんだ。目が合った途端に視線を逸らすのは意識しているからなの? そういえば、先生と視線が合うと気まずくなって逸らすことがけっこうあるかも。え! 相手が体に触れるのは好意がある証拠なの! 先生に何度か頭を撫でられたし、手も握った。もしかして、先生、私に好意があるの? 近くにいるのもそうなの? 先生の家でカレーを食べたとき、先生、私の隣に座っていた。これって、私の近くが嫌じゃないってことだよね。
「藍沢さん」
突然、トントンと肩を叩かれた。
本から顔を上げ、視線を向けると、先生がいた。
「せ、先生! なんでここに?」
先生に恋愛関係の本を読んでいることを知られたくなくて、咄嗟に本を背中の後ろに隠した。
「やっと気づいた。藍沢さんと会った日に借りた本を返しに来たんだ。それで次に借りる本を探していたら、藍沢さんを見かけてね。さすがに三回声をかけて無視されたら凹むね」
先生が苦笑を浮かべる。
全然、呼ばれていることに気づかなかった。
「すみません! 全く呼ばれていることに気づいていませんでした。無視したわけじゃないんです」
「冗談だよ。無視されたとは思ってないから。本に集中していたんでしょ? 何を熱心に読んでいたの?」
「えーと、あの、心理学の本をちょっと」
「そっか。ここは心理学の棚だもんな」
先生が棚に視線を向ける。
今日の先生はボーダー柄のカットソーに黒ジーンズ姿で、少し幼く見えるけど、素敵だ。先生が輝いて見えちゃうのは、やっぱり恋しているから?
カウンターで本を返したあと、何となく心理学の本がある棚に行った。『恋愛の心理学』という本が目に留まる。
周囲に誰もいないのを確認してから本をそっと棚から取り出す。パラパラと何となくページを捲る。
へえー男性って視線を多く送ると相手のことを好きになる傾向があるんだ。目が合った途端に視線を逸らすのは意識しているからなの? そういえば、先生と視線が合うと気まずくなって逸らすことがけっこうあるかも。え! 相手が体に触れるのは好意がある証拠なの! 先生に何度か頭を撫でられたし、手も握った。もしかして、先生、私に好意があるの? 近くにいるのもそうなの? 先生の家でカレーを食べたとき、先生、私の隣に座っていた。これって、私の近くが嫌じゃないってことだよね。
「藍沢さん」
突然、トントンと肩を叩かれた。
本から顔を上げ、視線を向けると、先生がいた。
「せ、先生! なんでここに?」
先生に恋愛関係の本を読んでいることを知られたくなくて、咄嗟に本を背中の後ろに隠した。
「やっと気づいた。藍沢さんと会った日に借りた本を返しに来たんだ。それで次に借りる本を探していたら、藍沢さんを見かけてね。さすがに三回声をかけて無視されたら凹むね」
先生が苦笑を浮かべる。
全然、呼ばれていることに気づかなかった。
「すみません! 全く呼ばれていることに気づいていませんでした。無視したわけじゃないんです」
「冗談だよ。無視されたとは思ってないから。本に集中していたんでしょ? 何を熱心に読んでいたの?」
「えーと、あの、心理学の本をちょっと」
「そっか。ここは心理学の棚だもんな」
先生が棚に視線を向ける。
今日の先生はボーダー柄のカットソーに黒ジーンズ姿で、少し幼く見えるけど、素敵だ。先生が輝いて見えちゃうのは、やっぱり恋しているから?