「逃げていいんだよ」と彼は言ってくれた。
「俺もなんか読んでみようかな」
そう言って先生は分厚い本を手に取る。
その場でパラパラとページを捲る姿がカッコいい。先生は何をしていても絵になる。
「うん?」
先生が私の方に視線を向けた。
目が合い、慌てて逸らす……って、私の行動、先生のことを思いっきり意識しているじゃん。恥ずかしい。
「なんか藍沢さん、顔が赤いけど、熱ある?」
先生の手がいきなり私の額に触れる。
ドキッとした。
「熱はないか」
そう言って先生が手を離す。
「もう、いきなり触らないで下さい!」
恥ずかしさでいっぱいになり、怒ったような言い方になった。
先生が人差し指を立て、私の唇に触れそうな位置まで寄せる。そして「しー。ここは図書館ですよ」と小声で言った。
そうだった。今の私の声は迷惑なる程大きかったかも。
「すみません」
先生に合わせて私も小声になる。そんな私を見て、先生はクスッと笑う。
「ねえ、藍沢さん、昼一緒に食べない?」
「え」
思いがけない誘いに鼓動が速くなる。
「もし予定がなければだけど」
「ありません!」
また声が大きくなる。
先生が人差し指を立て「しー」と言った。
「あ、すみません」
「じゃあ、一時間後に図書館の出入口で」
「はい」
私の返事を聞くと、先生は分厚い本を持ったまま閲覧コーナーの方へ歩いていった。その背中を見ながら、この場で本を読まなかったのは、私に気を遣ってくれた気がした。
そう言って先生は分厚い本を手に取る。
その場でパラパラとページを捲る姿がカッコいい。先生は何をしていても絵になる。
「うん?」
先生が私の方に視線を向けた。
目が合い、慌てて逸らす……って、私の行動、先生のことを思いっきり意識しているじゃん。恥ずかしい。
「なんか藍沢さん、顔が赤いけど、熱ある?」
先生の手がいきなり私の額に触れる。
ドキッとした。
「熱はないか」
そう言って先生が手を離す。
「もう、いきなり触らないで下さい!」
恥ずかしさでいっぱいになり、怒ったような言い方になった。
先生が人差し指を立て、私の唇に触れそうな位置まで寄せる。そして「しー。ここは図書館ですよ」と小声で言った。
そうだった。今の私の声は迷惑なる程大きかったかも。
「すみません」
先生に合わせて私も小声になる。そんな私を見て、先生はクスッと笑う。
「ねえ、藍沢さん、昼一緒に食べない?」
「え」
思いがけない誘いに鼓動が速くなる。
「もし予定がなければだけど」
「ありません!」
また声が大きくなる。
先生が人差し指を立て「しー」と言った。
「あ、すみません」
「じゃあ、一時間後に図書館の出入口で」
「はい」
私の返事を聞くと、先生は分厚い本を持ったまま閲覧コーナーの方へ歩いていった。その背中を見ながら、この場で本を読まなかったのは、私に気を遣ってくれた気がした。