恋とクリームソーダ
「いつ?」
「うーん、2学期からかなぁ」
「かなぁ、って…」
「どこに引っ越すの?」
遠いんだろうな、と思った。葉月の表情がやけに冷めていたから。
「知らね。」
「はぁ?」
「東京。」葉月がクリームソーダをつつく。アイスとソーダの境目が曖昧になっていく。「の、どっか。」
東京かぁ、行ったことないや。また葉月が遠いところに行ってしまう。
葉月がストローに口つけてクリームソーダを飲む。「あぁうっま。」
それから私を見て「この店見つけたこと、他の人に自慢してもいいよ。」って笑う。
このときの私は、まだ泣くことを知らなかった。寂しいって感情が本当はどういうものなのかわからなかった。
「じゃあ私、これから誰に数学教えてもらったらいいの?」
「そりゃ、他に誰かいい人見つけたらいい。いくらでもいる、榎本よりも数学出来る人」
「それはそうだけど笑」
私、赤点だし。
「そういうことじゃないじゃん」
これが私の精一杯だった。