恋はリハビリ中!(マンガシナリオ)
#5 赤髪くんはいつも優しい
ひまり「ねぇ、それでリハビリってのは、具体的に何をするの?」
◯ひまりは食事が終わった後も、しつこく話を聞きたがった。
恋「とりあえず毎日会って話すこと。
あと、私の足のリハビリが中途半端だったから通院を再開することにしたよ。
日常生活に支障がなくてもきちんとリハビリを続けた方が、将来的に変形性膝関節症にならないんだって。」
ひまり「え、それがリハビリ? もう少し色気があることはしないの?」
恋「色気って?」
ひまり「た・と・え・ば。」
◯きょとんとする恋にひまりがニタリと悪い顏をする。
ひまり「手を繋ぐとかぁ、抱きしめるとかぁ、キスしちゃうとか…!?」
恋「す、するわけないじゃん!」
◯恋は思わず椅子から立ち上がった。
ひまり「いいじゃん、それくらいはアリだよ。だって、まだ好きなんでしょ? 先生のこと。」
恋「なんでそれを…ッ⁉」
ひまり「恋は顏に出るからすぐ分かるよ。」
恋「でも、それは無理なの。」
ひまり「もう! 初めから諦めちゃダメだよ。」
恋「だって…。」
〇恋は力なくうなだれる。
恋(星先生には好きな人が居るんだよ!)
◯そのとき、恋のスマホからメールの着信音が鳴った。
意外な名前が画面にポップアップされて、恋は思わず呟く。
恋「あ、赤髪くん。」
ひまり「誰よそれ。」
◯ひまりは耳ざとく恋の呟きをキャッチすると、横から身を乗り出してスマホをのぞきこもうとする。
恋「同じ学科の人だよ。この前の事故の時、アドレスを教えてもらったんだ。」
ひまり「逆ナンパ? 星先生といい、アンタなかなかやるじゃん。」
恋「ちがっ…ただ優しい人なだけ。」
ひまり「へぇ、優しい彼なんだ?」
恋「もう、やめてってば! 私が事故った時に助けてくれた人だよ。それだけ。」
◯恋は脇から覗こうとするひまりからスマホを隠しながら、ポップアップされたメールの文字に目を落とした。
礼央『どこに居るの?』
恋『大学の食堂です。』
礼央『奇遇だね、俺も食堂だよ。』
恋(え、俺も?)
◯その瞬間、肩を叩かれた恋は反射的に後ろを振り向いた。
ムニュ!
礼央「みーつけた!」
〇恋の頬が用意されていた礼央のひとさし指に食い込んだ。
恋「…碓井くん?」
〇恋は唖然とした。
今、メールをしたばかりの相手が目の前に居たからだ。
礼央はオーバーサイズのスウエット地の半袖シャツにアーミー柄のパンツを着ている。
よく見たら左耳には向こうの景色が見える大きなボディピアスまで空いていて、やんちゃそうな雰囲気が医療系の大学にはそぐわない。
礼央「礼央でいいよ、タメだし。俺も恋って呼ぶから。」
恋「え、え?」
〇ニヤニヤした顏のひまりが話に割り込んできた。
ひまり「やっぱ、キミたち付き合ってんの?」
恋「違うから!」
礼央「何のハナシ?」
〇話が理解できない礼央を上から下まで見ていたひまりが、急に口に手を当てて興奮ぎみに恋の背中をバンバンと叩いた。
ひまり「あー! この人、なんか見たことあると思ってたけど北南体育高の元主将でしょ? 」
恋「あの北南の⁉」
〇目を丸くしている恋とひまりを見て、礼央はポリポリと鼻の頭を掻いた。
礼央「まぁ、一応。」
〇恋は礼央を二度見した。
恋(どこかで聞いたことある苗字だと思ってたんだよね。)
〇恋は写真でしか見たことがなかったが、高校生のころの碓井礼央は陸上界では有名人だった。
現役時代にその活躍はいつもネットニュースでピックアップされていて、卒業前は名門大学からのラブコールが凄かったらしい。
ひまりが首をかしげた。
ひまり「でも、そんなスターがなんで医療大に来たの?
この学校はそんなに陸上に力入れてないよね。」
恋(たしかに不思議だ。
陸上を続けるつもりがなかった私とひまりならともかく。)
礼央「別に強豪大学じゃなくても陸上はできるから、やりたい勉強を優先したんだ。」
恋「すご。天才は環境を選ばないってことね。」
礼央「それより。」
〇礼央はミーハーに騒ぐひまりをスル―して恋に体を寄せてきた。
恋(わ、いい匂い。)
〇礼央は小声で囁いた。
礼央「あの事故のあと、どうなった?」
恋「おかげさまでノーダメージ。保険も使わなくて済むみたい。」
礼央「良かった。心配してたんだ。」
恋(ホント、礼央って見た目はヤンキーだけど、根は優しくていいヤツなのよね。)
〇恋の中で礼央の好感度は爆上がりだ。
三人は学食のテーブルに腰かけてランチをしながら話を続けた。
礼央「で、メクサスの持ち主はどんなジジイだったの?」
恋「礼央って口悪いよね。」
礼央「俺らの年代からしたらみんな講師はジジイじゃん。
で、どのジジイだったの?」
〇礼央と話したくて仕方ないひまりが横から口を挟んだ。
ひまり「星先生だよ!」
礼央「ホシって…運動学の?」
〇大げさに驚く礼央に、ひまりがニヤニヤしながら話を続ける。
ひまり「さすがに星先生は若いからジジイには見えないよね。
しかも、恋の初恋の人なんだよ~!」
礼央「は? なにそれ。」
〇なぜか礼央はムッとした表情になった。
◯ひまりは食事が終わった後も、しつこく話を聞きたがった。
恋「とりあえず毎日会って話すこと。
あと、私の足のリハビリが中途半端だったから通院を再開することにしたよ。
日常生活に支障がなくてもきちんとリハビリを続けた方が、将来的に変形性膝関節症にならないんだって。」
ひまり「え、それがリハビリ? もう少し色気があることはしないの?」
恋「色気って?」
ひまり「た・と・え・ば。」
◯きょとんとする恋にひまりがニタリと悪い顏をする。
ひまり「手を繋ぐとかぁ、抱きしめるとかぁ、キスしちゃうとか…!?」
恋「す、するわけないじゃん!」
◯恋は思わず椅子から立ち上がった。
ひまり「いいじゃん、それくらいはアリだよ。だって、まだ好きなんでしょ? 先生のこと。」
恋「なんでそれを…ッ⁉」
ひまり「恋は顏に出るからすぐ分かるよ。」
恋「でも、それは無理なの。」
ひまり「もう! 初めから諦めちゃダメだよ。」
恋「だって…。」
〇恋は力なくうなだれる。
恋(星先生には好きな人が居るんだよ!)
◯そのとき、恋のスマホからメールの着信音が鳴った。
意外な名前が画面にポップアップされて、恋は思わず呟く。
恋「あ、赤髪くん。」
ひまり「誰よそれ。」
◯ひまりは耳ざとく恋の呟きをキャッチすると、横から身を乗り出してスマホをのぞきこもうとする。
恋「同じ学科の人だよ。この前の事故の時、アドレスを教えてもらったんだ。」
ひまり「逆ナンパ? 星先生といい、アンタなかなかやるじゃん。」
恋「ちがっ…ただ優しい人なだけ。」
ひまり「へぇ、優しい彼なんだ?」
恋「もう、やめてってば! 私が事故った時に助けてくれた人だよ。それだけ。」
◯恋は脇から覗こうとするひまりからスマホを隠しながら、ポップアップされたメールの文字に目を落とした。
礼央『どこに居るの?』
恋『大学の食堂です。』
礼央『奇遇だね、俺も食堂だよ。』
恋(え、俺も?)
◯その瞬間、肩を叩かれた恋は反射的に後ろを振り向いた。
ムニュ!
礼央「みーつけた!」
〇恋の頬が用意されていた礼央のひとさし指に食い込んだ。
恋「…碓井くん?」
〇恋は唖然とした。
今、メールをしたばかりの相手が目の前に居たからだ。
礼央はオーバーサイズのスウエット地の半袖シャツにアーミー柄のパンツを着ている。
よく見たら左耳には向こうの景色が見える大きなボディピアスまで空いていて、やんちゃそうな雰囲気が医療系の大学にはそぐわない。
礼央「礼央でいいよ、タメだし。俺も恋って呼ぶから。」
恋「え、え?」
〇ニヤニヤした顏のひまりが話に割り込んできた。
ひまり「やっぱ、キミたち付き合ってんの?」
恋「違うから!」
礼央「何のハナシ?」
〇話が理解できない礼央を上から下まで見ていたひまりが、急に口に手を当てて興奮ぎみに恋の背中をバンバンと叩いた。
ひまり「あー! この人、なんか見たことあると思ってたけど北南体育高の元主将でしょ? 」
恋「あの北南の⁉」
〇目を丸くしている恋とひまりを見て、礼央はポリポリと鼻の頭を掻いた。
礼央「まぁ、一応。」
〇恋は礼央を二度見した。
恋(どこかで聞いたことある苗字だと思ってたんだよね。)
〇恋は写真でしか見たことがなかったが、高校生のころの碓井礼央は陸上界では有名人だった。
現役時代にその活躍はいつもネットニュースでピックアップされていて、卒業前は名門大学からのラブコールが凄かったらしい。
ひまりが首をかしげた。
ひまり「でも、そんなスターがなんで医療大に来たの?
この学校はそんなに陸上に力入れてないよね。」
恋(たしかに不思議だ。
陸上を続けるつもりがなかった私とひまりならともかく。)
礼央「別に強豪大学じゃなくても陸上はできるから、やりたい勉強を優先したんだ。」
恋「すご。天才は環境を選ばないってことね。」
礼央「それより。」
〇礼央はミーハーに騒ぐひまりをスル―して恋に体を寄せてきた。
恋(わ、いい匂い。)
〇礼央は小声で囁いた。
礼央「あの事故のあと、どうなった?」
恋「おかげさまでノーダメージ。保険も使わなくて済むみたい。」
礼央「良かった。心配してたんだ。」
恋(ホント、礼央って見た目はヤンキーだけど、根は優しくていいヤツなのよね。)
〇恋の中で礼央の好感度は爆上がりだ。
三人は学食のテーブルに腰かけてランチをしながら話を続けた。
礼央「で、メクサスの持ち主はどんなジジイだったの?」
恋「礼央って口悪いよね。」
礼央「俺らの年代からしたらみんな講師はジジイじゃん。
で、どのジジイだったの?」
〇礼央と話したくて仕方ないひまりが横から口を挟んだ。
ひまり「星先生だよ!」
礼央「ホシって…運動学の?」
〇大げさに驚く礼央に、ひまりがニヤニヤしながら話を続ける。
ひまり「さすがに星先生は若いからジジイには見えないよね。
しかも、恋の初恋の人なんだよ~!」
礼央「は? なにそれ。」
〇なぜか礼央はムッとした表情になった。