恋はリハビリ中!(マンガシナリオ)
#7 忘れられない初恋
バイザー「コッ、コラ実習生! あれほど患者さんには失礼なことを言うなって言っただろォー‼」
〇リハビリ室に戻って来たバイザーの先生の叫び声。
礼央が動けない恋の肩を叩いて耳元で囁く。
礼央「とりあえず、退室しよう。」
◯恋は悔しさでグッと胸が詰まる。
患者「あれ実習生なの?」
患者「あちゃ~やっちゃってるね…。」
理学療法士「ヤバくね。」
理学療法士「勝手に腰が悪いとか言って、恥ずかしいヤツ。」
〇周囲に居た患者さんと先生たちの冷たい視線に、恋の心は折れそうになった。
恋(恥ずかしくて死ねる! 半人前のくせに余計な口を…。)
〇リハビリ室は気まずい雰囲気。
引き返してきた星先生が、泣きそうな恋の頭にそっと手を置いて声をかける。
星「葉奈乃さん、続けてください。」
恋「…え?」
〇恋は耳を疑った。
星「君の意見を聞きたいんだ。
ジェシーさんの行動を見て、気になることがあったんじゃないの?」
〇星先生が背中を押してくれたことで勇気づけられた恋は、思い切って自分の考えを口にした。
恋「あ、えと…ジェシーさんが歩き出す時に、右側の踵設置のタイミングが遅れているなと感じました。」
星「ということは?」
恋「股関節の進展に問題があると思います。たぶん…。」
星「そう。よく気がつきましたね。」
〇星先生がにっこりと微笑んだ。
星「ジェシーは足だけじゃなく、骨盤の歪みもあるんですよ。」
〇仕事モードの落ち着きを取り戻した星先生は、ジェシーに優しく語りかけた。
星「というわけでジェシー、もう少し我慢してリハビリを続けようね。」
ジェシー「ムゥ。ソウタがそう言うなら…オッケー!」
〇しぶしぶながらも自分の訓練台に戻ったジェシー。
恋「なんとかピンチを脱したみたい。」
〇ホッとする恋の肩を高齢の女性・伊藤が優しくポンポンと叩く。
伊藤「いやー、諦めないで偉かったね。ご苦労さん。」
恋「へへ…。」
伊藤「頑張ってね学生さん。また明日も勉強に来てね。応援してるよ。」
恋「あ、ありがとうございます!」
〇自分を励ましてくれるおばあちゃんもいて、恋はモヤモヤしていた気持ちがスッキリする。
リハビリ室の嫌な空気もすぐに元に戻り、人々の話し声やマシンの金属音が室内に響き始める。
礼央は軽く舌打ちすると「先に休憩行ってきます。」とバイザーに声をかけてリハビリ室から出ていった。
星先生がジェシーの腰に電気の処置を終えて恋の側に来た。
星「葉奈乃さん、スゴイじゃないですか!」
恋「へ?」
星「あの一瞬で立脚分析するなんて、お見事です。」
恋「いえ、星先生の患者さんなのにでしゃばってすみませんでした。次からは気をつけます。」
〇恋が頭を下げると星先生は優しく微笑んだ。
星「それなら大丈夫。
ジェシーは私の患者ではありませんから。」
恋「え?」
〇星先生の言葉にキョトンとしていると、私たちに近寄ってきたバイザーがわざとらしく咳払いをした。
バイザー「葉奈乃くん紹介する。あちらが今日の君の実習の相手のジェシーさんだ。」
恋「は?」
〇恋は面食らって口をぽかんと開いた。
恋「でも、ジェシーさんは星先生の…。」
バイザー「ジェシーさんは僕の患者です。僕の手が空くまで代わりに星先生にお願いしていただけだよ。」
恋(と言うことは…!)
〇青ざめる恋。
チーン。
〇舌打ちして明らかに嫌な顔をするジェシーに、恋はさっきまで心の中で準備していた説明をぜんぶ真っ白に飛ばしてしまった。
恋(スマホ見なくても分かるわ…今日の占い、絶対最下位!)
♢
〇動揺しすぎて実習の評価が悪かった恋は、後日レポートにプラス反省文を添えてバイザーに提出することになった。
教室に居残りをしてレポートを書いていると、不意に礼央が隣の席に座った。
礼央「この前はゴメン。」
恋「何のこと?」
礼央「実習でモメた時に守ってあげられなくて。」
恋「ああ、何だ。あんなこと気にしないで。私、本当にツイてない女だから、いちいち守ってたらキリがないよ。」
〇恋は冗談のように軽く返したつもりだったのに、礼央は声のトーンを落としてうつむいた。
礼央「あのさ恋って…星のことが好きなの?」
〇レポートを書いていた文字がぐにゃりと歪み、恋は顏を真っ赤にして礼央をにらむ。
恋「な、なによ急に!」
礼央「気になるんだよ。」
恋(変な礼央。)
〇子どもみたいに唇を尖らす礼央に、恋は少し考えてから答えた。
恋「星先生はね、私の初恋の人なんだ。
一回フラれたと思ってたんだけどそれが誤解だったって知って…でも先生に好きな人が居るってことが分かったから諦めなきゃならないとは思ってる。」
礼央「…そうだったんだ。」
恋「でもね、なかなか諦められないんだ。」
〇苦しそうに笑う恋。
恋「未練がましいよね。ヘタしたらストーカー予備軍だよ。」
礼央「そういうの、すごく分かる。」
〇礼央は長机に肩肘をついて至近距離で恋を見上げた。
礼央「実は俺もそうなんだ。」
恋「マジ? 聞きたいな、礼央の恋バナ。」
〇礼央は一瞬、何かを言いたげな顏をした。
恋と見つめ合ったあと、おもむろに大きな欠伸をしてから腕に顏をうずめた。
礼央「いつかじっくり聞かせるよ。」
恋「自分だけ秘密ってこと? そんなのズルいじゃん。」
礼央「ま、その時期が来たらね。」
〇リハビリ室に戻って来たバイザーの先生の叫び声。
礼央が動けない恋の肩を叩いて耳元で囁く。
礼央「とりあえず、退室しよう。」
◯恋は悔しさでグッと胸が詰まる。
患者「あれ実習生なの?」
患者「あちゃ~やっちゃってるね…。」
理学療法士「ヤバくね。」
理学療法士「勝手に腰が悪いとか言って、恥ずかしいヤツ。」
〇周囲に居た患者さんと先生たちの冷たい視線に、恋の心は折れそうになった。
恋(恥ずかしくて死ねる! 半人前のくせに余計な口を…。)
〇リハビリ室は気まずい雰囲気。
引き返してきた星先生が、泣きそうな恋の頭にそっと手を置いて声をかける。
星「葉奈乃さん、続けてください。」
恋「…え?」
〇恋は耳を疑った。
星「君の意見を聞きたいんだ。
ジェシーさんの行動を見て、気になることがあったんじゃないの?」
〇星先生が背中を押してくれたことで勇気づけられた恋は、思い切って自分の考えを口にした。
恋「あ、えと…ジェシーさんが歩き出す時に、右側の踵設置のタイミングが遅れているなと感じました。」
星「ということは?」
恋「股関節の進展に問題があると思います。たぶん…。」
星「そう。よく気がつきましたね。」
〇星先生がにっこりと微笑んだ。
星「ジェシーは足だけじゃなく、骨盤の歪みもあるんですよ。」
〇仕事モードの落ち着きを取り戻した星先生は、ジェシーに優しく語りかけた。
星「というわけでジェシー、もう少し我慢してリハビリを続けようね。」
ジェシー「ムゥ。ソウタがそう言うなら…オッケー!」
〇しぶしぶながらも自分の訓練台に戻ったジェシー。
恋「なんとかピンチを脱したみたい。」
〇ホッとする恋の肩を高齢の女性・伊藤が優しくポンポンと叩く。
伊藤「いやー、諦めないで偉かったね。ご苦労さん。」
恋「へへ…。」
伊藤「頑張ってね学生さん。また明日も勉強に来てね。応援してるよ。」
恋「あ、ありがとうございます!」
〇自分を励ましてくれるおばあちゃんもいて、恋はモヤモヤしていた気持ちがスッキリする。
リハビリ室の嫌な空気もすぐに元に戻り、人々の話し声やマシンの金属音が室内に響き始める。
礼央は軽く舌打ちすると「先に休憩行ってきます。」とバイザーに声をかけてリハビリ室から出ていった。
星先生がジェシーの腰に電気の処置を終えて恋の側に来た。
星「葉奈乃さん、スゴイじゃないですか!」
恋「へ?」
星「あの一瞬で立脚分析するなんて、お見事です。」
恋「いえ、星先生の患者さんなのにでしゃばってすみませんでした。次からは気をつけます。」
〇恋が頭を下げると星先生は優しく微笑んだ。
星「それなら大丈夫。
ジェシーは私の患者ではありませんから。」
恋「え?」
〇星先生の言葉にキョトンとしていると、私たちに近寄ってきたバイザーがわざとらしく咳払いをした。
バイザー「葉奈乃くん紹介する。あちらが今日の君の実習の相手のジェシーさんだ。」
恋「は?」
〇恋は面食らって口をぽかんと開いた。
恋「でも、ジェシーさんは星先生の…。」
バイザー「ジェシーさんは僕の患者です。僕の手が空くまで代わりに星先生にお願いしていただけだよ。」
恋(と言うことは…!)
〇青ざめる恋。
チーン。
〇舌打ちして明らかに嫌な顔をするジェシーに、恋はさっきまで心の中で準備していた説明をぜんぶ真っ白に飛ばしてしまった。
恋(スマホ見なくても分かるわ…今日の占い、絶対最下位!)
♢
〇動揺しすぎて実習の評価が悪かった恋は、後日レポートにプラス反省文を添えてバイザーに提出することになった。
教室に居残りをしてレポートを書いていると、不意に礼央が隣の席に座った。
礼央「この前はゴメン。」
恋「何のこと?」
礼央「実習でモメた時に守ってあげられなくて。」
恋「ああ、何だ。あんなこと気にしないで。私、本当にツイてない女だから、いちいち守ってたらキリがないよ。」
〇恋は冗談のように軽く返したつもりだったのに、礼央は声のトーンを落としてうつむいた。
礼央「あのさ恋って…星のことが好きなの?」
〇レポートを書いていた文字がぐにゃりと歪み、恋は顏を真っ赤にして礼央をにらむ。
恋「な、なによ急に!」
礼央「気になるんだよ。」
恋(変な礼央。)
〇子どもみたいに唇を尖らす礼央に、恋は少し考えてから答えた。
恋「星先生はね、私の初恋の人なんだ。
一回フラれたと思ってたんだけどそれが誤解だったって知って…でも先生に好きな人が居るってことが分かったから諦めなきゃならないとは思ってる。」
礼央「…そうだったんだ。」
恋「でもね、なかなか諦められないんだ。」
〇苦しそうに笑う恋。
恋「未練がましいよね。ヘタしたらストーカー予備軍だよ。」
礼央「そういうの、すごく分かる。」
〇礼央は長机に肩肘をついて至近距離で恋を見上げた。
礼央「実は俺もそうなんだ。」
恋「マジ? 聞きたいな、礼央の恋バナ。」
〇礼央は一瞬、何かを言いたげな顏をした。
恋と見つめ合ったあと、おもむろに大きな欠伸をしてから腕に顏をうずめた。
礼央「いつかじっくり聞かせるよ。」
恋「自分だけ秘密ってこと? そんなのズルいじゃん。」
礼央「ま、その時期が来たらね。」