蜜味センチメンタル

「そんなの、思い続けて何になるんです?一途?純愛?…ハッ!馬鹿馬鹿しい」

吐き捨てるような辛辣な物言いに、咄嗟に反応したのは大和だった。

「おい那色!」

「待って、大和さん」

しかし止めに入ろうとした大和を制し、羅華は那色を見る。眉を寄せ、厳しい視線を投げかけた。

「那色くんは、どうしてそう思うの?」

羅華の絶対零度の言葉に対しても那色は物怖じすることなく、「言葉通りですよ」と続ける。

「だって何の意味も無いじゃないですか。羅華さんがそうでも向こうは違って、どうせとっくに忘れ去ってますよ。実際今もその人とどうにもなってないんでしょう?なんでそんな男のためにあなたの貴重な人生捧げなきゃなんないんですか」

「……」

「純愛だなんていって、所詮は綺麗事なんですよ。そんなものに縋って悲劇のヒロイン気取って、可哀想な自分に酔ってるだけなんですって」

一気に言い終えた那色はまだ言い足りなさそうだったが、大和に肩を叩かれ口を噤んだ。

「…那色。言い過ぎだ」

けれどその声色も表情も、どこか彼を責めきれないようで大和の顔は浮かなかった。——何より、それを言った那色自身が、酷く辛そうな顔をしていた。

「ごめん、羅華ちゃん。ちょっとヒートアップし過ぎたみたいだからこいつ下がらせるよ」

そう言って大和は那色の背中を叩く。静かに裏に消えていった那色に、羅華は思わずため息を吐いた。

「…重ね重ねごめんね、羅華ちゃん。なんてお詫びすればいいか…」

「いえ…確かにびっくりはしましたけど…でも、なんだかあんまり責める気になれなくて」

実際散々な物言いだった。これまでの自分を全て否定するような言葉の弾丸。だが、不思議と腹が立たなかった。

辛そうな那色の表情がそうさせているのか。はたまた自分でも思い当たる節があるのか、今は判断が出来ない。

「那色くんって、毒舌ですね」

「我儘なんだよ、昔から」


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