蜜味センチメンタル
ぽつりと零すと、那色が少しだけ目を開く。
「なにそれ、反則」
「なんで?」
「かわいいってこと」
羅華が顔を真っ赤に染めるのを横目に、那色が歩き出す。それに引かれるように、羅華も足を踏み出した。
そのまま、街のイルミネーションの中を歩き出した。静かな光の粒が、道の両脇に降り注ぐように灯っている。
「本当は、」
しばらくして、那色がぽつりと口を開いた。
「……正直、怖かったんです」
羅華が驚いて顔を向けると、那色は前を見つめたまま、少し照れたように眉を下げた。
「今日来てくれるかどうか、ずっと不安だった。前に言った通り、来てくれなかったら諦めようって、自分に言い聞かせてたけど……全然割り切れてなくて」
「……うん」
羅華は黙って、繋いだ手に力を込める。
「でも、ドアの外に羅華さんが立ってるのを見た瞬間……心臓が止まるかと思った。嬉しくて、なんかもう、変な笑い出たくらい」
「そうなの?いつも通りに見えたけど」
「…羅華さんて、営業のくせに鈍感ですよね」
那色が少し口をとがらせて、ちらりと視線をよこす。