蜜味センチメンタル
カフェのテーブルには、ほどなくして色とりどりのスイーツが運ばれてきた。
那色が選んだキャラメルのガトーショコラは、ほんのり湯気を立てていて、スプーンを入れると中からとろりとソースが流れ出す。
「……わあ、見てるだけで美味しそう」
「羅華さんのミルフィーユも香りすごくいい香りですよ。一口、いいですか?」
「いいよ、どうぞ」
そう言って皿を差し出すも、那色は目を細めるだけで手を伸ばそうとしなかった。
「どうしたの?食べないの?」
「あーん…って、してくれないの?」
「えっ……え!?」
「ほらはやく」
身を乗り出して口を開く那色。おずおずとスプーンを差し出すと、那色はそれを素直に受け取り、ぱくりとひと口。
「ん……甘いけど、ベリーの酸味でちょうどいい。じゃあ、はい。今度は僕のをどうぞ」
「……う、うん」
交互にスイーツを味見し合うなんて、昔の自分なら絶対に照れてできなかっただろうに。
今はただ、那色と一緒にいられることが嬉しくて、つい顔が緩んでしまう。
「……ねえ、前にもこうやってスイーツ一緒に食べたこと、あったよね」
「行きましたね。僕らの初デート」
「うん……あの頃は、まだお互い探り合ってた」
「ですね。でも今は……」
那色はマグカップを手に取り、ふっと笑った。
「ずっと好きだった羅華さんのこと、ちゃんと“彼女”って呼べるのが、すごく嬉しいです」
「……」
思わず言葉が出なかった。
ただ、心臓が小さく跳ねた音が、自分の中にしっかり響いていた。
「……私も。同じこと、思ってる」
囁くような声で返すと、那色の手がテーブルの下でそっと重なった。
その指先は少し冷たいけれど、ぎゅっと繋がれた瞬間、胸の奥に優しい温度が灯る。
ああ、こうして過ごす時間が、ずっと続けばいいのに。
そう思った矢先だった。