蜜味センチメンタル
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暗くなった病院の待合室には、受付の光だけが淡く差し込んでいた。
椅子に座り、羅華が病室から出てくるのをただじっと待つ間、那色はずっと落ち着かなかった。

あれから、何分経っただろう。

時計の針が進むたび、不安がじわりと喉元まで這い上がってくる。
何もできない時間ほど、苦しいものはない。

ようやく廊下の奥から姿を見せた羅華は、やや疲れた様子だった。
けれど、顔を見た瞬間、那色はそっと立ち上がった。

「お疲れさま。お母さん大丈夫でした?」

「うん……しばらく入院と検査は必要みたいだけど…ひとまずは、落ち着いたよ」

微笑みながらそう言った羅華だったが、その声にはどこか張りつめた緊張が残っていた。

「とりあえず、今日中に入院の手続きしなきゃいけなくて……準備もあるから、私一回実家に戻るね。荷物を用意して、それからまた病院に戻ってくると思う」

「そっか……」

「だから那色くん。今日はもう、帰ってくれて大丈夫だよ。こんなところまで一緒に来てくれて、本当にありがとう」

言葉はやさしかった。けれど、“ここで区切りたい”という線引きのようなものが感じられて、那色の胸に小さな痛みが走る。

「付き添わせてもらえないんですか?」

「……大丈夫。ほんとに、ありがとう。でも…今は色んなこと、ひとりで整理したくて」

「……そうですか…」


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