蜜味センチメンタル
「それからあとひとつ、式典の演出面についてご提案があります」
「演出?」
「はい。ゲストスピーカーとして、タレントの起用を検討しています。まだ具体的な名前は社内で調整中ですが、コンセプトとの親和性を軸に候補を挙げています」
蓮水の眉がやや動いた。
「タレント、ですか……話題性はありますが、うちはあまりそういう派手な方向には寄せたくないのですが」
羅華は、即座に反論せず、淡々と説明を続けた。
「もちろん話題性だけが目的ではありません。今回の式典のテーマは“世代をつなぐ食文化”です。ですので、世代を超えて支持を受けている人物、あるいは“家族”“食卓”“文化の継承”といった価値観に通じた活動をしている方を候補にしています」
「なるほど。それなら……多少、納得できる」
「単なる賑やかしではなく、企業としてのメッセージを伝える役割としての起用です。特に今回は70周年という節目なので、今後のブランドイメージを社外に打ち出す“初手”としても重要になるかと」
「……上に報告するには、その“意味づけ”が必要だな」
蓮水は、資料をパタンと閉じてから、真っ直ぐ羅華を見る。
「で、それを誰が担えるか、きちんと社内で絞ってらっしゃるんですね?」
「はい。ビジュアルイメージや発信力だけでなく、トーンや実績、視聴者層も含めて検討中です。“企業と並んで立っても違和感がない人間かどうか”を基準にしています」
「それは頼もしいことですね」