蜜味センチメンタル

「はい。原岸です」

『あ、原岸さん?鎌田ですー。お休みの日にすみません。けど部長がどうしても今確認しろってうるさくてぇ』

「ううん、大丈夫。それでどうしたの?」

『あのー、さっき原岸さん宛に電話があったんですけどー……グランド・ヴィリオの会場レイアウト、一部変更の要望が来てまして。パネルの配置と動線のところ、再検討したいっていってて』

「……ああ、シスイ食品の周年式典の件だね」

羅華はテーブルの上にメモを手繰り寄せながら答える。

「昨日の夕方、蓮水さんからも軽く話もらってたよ。たしか来賓席の位置も少し奥にずらしたいって話だよね?」

『はい、そうです。それと追加で、演出時の照明の動きも演出部と詰め直してほしいって。デザイン部の担当と来週頭に集まりたいって言ってたんですけど、原岸さんの予定どうですか?』

「来週なら火曜なら動けるよ。仮で会議室押さえておいて」

『了解でーす。すみません、ほんと助かりました。あとはこっちで社内調整して共有に入れときます』

「よろしくね、鎌田さん」

『はーい。じゃ、失礼しまーす』

通話を終えると、羅華はふぅとひと息ついてスマホを伏せた。コーヒーの香りが、少し冷めかけた空気のなかでふんわりと立ちのぼる。

「ごめん、那色くん。仕事の話になっちゃって」

「いえ、大丈夫ですよ。……あの、シスイ食品って…」

「あ、うん。うちの会社の担当先。最近私が担当になったんだけど、色々慌ただしくて」

簡単に説明しながらも、那色の反応がどこか曖昧な気がして、羅華はふと眉をひそめる。

「……どうかした?」

那色はほんの一瞬、視線を伏せた。

「……いえ…まあ、ちょうどいいかなって思っただけです」

「ちょうどいいって……」

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