蜜味センチメンタル
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都内のラグジュアリーホテル。
シスイ食品主催による式典関係者の懇親会は、会場全体に控えめな華やかさを纏っていた。

来賓のスーツの列、シャンデリアの光、テーブルの上に並ぶグラスとオードブルの皿。穏やかなBGMと談笑の声が溶け合い、まるで“整えられた社交”そのもの。

羅華はスタッフ用の黒いリボンを胸元に着け、会場の端で資料を抱えていた。

営業部として出席してはいるものの、立場はあくまで裏方。ホールを彩る“誰か”にはなれないことを、痛いほどわかっていた。

——だからなのかもしれない。

視線の先に那色の姿を見つけたとき、心の奥で小さく騒ぐ音がした。

那色は落ち着いたネイビーのスーツを着こなし、まっすぐ立っていた。社員バッジをつけ、数人の幹部に囲まれながらもどこか余裕を感じさせる立ち振る舞い。

肩肘を張っているわけでもない。むしろ自然体のまま相手の言葉を丁寧に聞き、端的に返している。

その姿は若いのに堂々としているというより、“そもそもこういう場に慣れている”人のそれだった。

彼はもう、完全に後継者の顔をしていた。


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