蜜味センチメンタル
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式典関係者の懇親会も中頃。控えめな華やかさのなか、グラス片手に立ち話を終えた那色はふと一歩だけ人の波から外れた。

しかし視線の端で、誰かが近づいてくるのに気づく。

すらりとした立ち姿。オフホワイトのドレスに身を包み、きらめくシャンデリアの光を柔らかく受けている女。

柔らかな照明が肩のラインに落ちて、まるで舞台のスポットを浴びているようにも見える。

——誰もが知る顔。
TNTテレビの看板アナウンサー、嘉島藍良。

「紫水那色さん、ですよね?」

声をかけられ、那色はすぐに姿勢を正し、礼儀正しく微笑を浮かべた。

「はい。経営戦略部の紫水です。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」

「とんでもないです。改めまして、TNTテレビの嘉島です。今回の式典では、大変お世話になります」

上品な声色と、相手の様子を自然に測るような視線。場に慣れた人間の所作に、欠片も無駄はなかった。

「存じ上げております。ニュースも、報道番組も拝見していました」

「まあ!光栄です。……でも実は以前、シスイ食品さんとはご一緒したことがあるんですよ」

「そうなんですね」

「CMイベントの司会をしたことがあって。まだ私が新人の頃でしたけど……覚えてる方、いるかしら」

那色はわずかに目を細め、記憶を引き出す。

「たしか……商品開発部のPR発表会でしょうか」

「それです。よく覚えてますね。さすがですね、“次の顔”」

冗談めかしたその口ぶりに、那色も同じように微笑を返した。

「一応、そういう立場を求められてますから」



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