蜜味センチメンタル
「……」
——そうだった。那色くんは、私を唯一、選んでくれた
那色と並んだ藍良は、確かにお似合いだった。自信に満ちていて、彼と並ぶ立場も知名度もあって、釣り合っている。
けれどそれは、外から見た評価に過ぎなくて。
誰かに認めてもらいたくて、那色を好きになったんじゃない。藍良に勝つ必要だってない。
藍良の影に怯えて、那色の気持ちさえ見失っていたのは、自分の方だった。
──戻りたくない。あの頃の私にも、藍良にも
羅華はそっと視線を上げた。
もう、過去に怯えて立ち尽くす顔なんて、見せる必要はない。
「……恨んでたよ。当たり前じゃない」
ぽつりと、けれどしっかりと羅華は言った。目をそらさず、まっすぐに藍良を見る。
「でも、言えなかった。親友だった藍良より、弥くんを選んで……そのことであなたを傷つけたって思ってたから。私のせいで、あなたがひとりになった気がして……だから、何も言えなかった」
「……」
「あの頃の仕打ちを忘れたわけじゃない。だけど、ずっとそのままでいるつもりもない」
藍良の表情が、ほんの一瞬だけ動く。
「あなたが私をどう見ていても、もういい。私はあの頃の私には戻らないし……何をされても、何を言われても……もう、あなたに縛られたくない」