蜜味センチメンタル
その勢いに、羅華は思わず息を呑んだ。
「ずっとそう。いつだって、あんたは誰かに守られて、何も失わない。あんたはいつだって守られて、選ばれて……私は、どれだけ頑張っても、誰の視界にも入らなかったのに!なんでよ……? なんで……!」
その声には怒気と、もっと深いところにある嫉妬が滲んでいた。
まるで堰を切ったように流れ出す感情。
言葉ではなく、溢れ出た積年の泥のようだった。
羅華は口を閉ざしたまま、真正面からその痛みを受け止める。
理不尽で、あまりに身勝手。それでも”そう感じてしまった”彼女の思いは、たしかに本物だったから。
「お兄ちゃんが今でもあんたを忘れられないことも、知ってるんでしょ?なのにどうしてあんたは全部忘れて、無かったことにして、のうのうと他の男と幸せになってるのよ!」
羅華の胸の奥がズキリと痛む。
藍良は一歩近づいてきて、なおも言葉を重ねる。
「私だって努力したわ!愛されるように、必要とされるように、ちゃんと選んでもらえるようにって、ずっと頑張ってきた」
藍良は、声を震わせながら続ける。
「なのにどうして……私はずっと独りなの?見た目だって、表情だって、完璧に整えて……アナウンサーになって、どれだけ脚光を浴びても、私自身を大事にしてくれる人なんて、誰ひとりいなかった」
「……」