蜜味センチメンタル
近づくと頬が赤く、額にうっすら汗がにじんでいるのが見えた。那色はそっとしゃがみこみ、手の甲を彼女の額に当てる。
「……熱、あるな」
肌は火照り、呼吸も浅く荒い。眠っているというより、うわごとのように唇が微かに動いていた。
──気づくのが遅すぎた……
胸の奥に、鈍く痛みが走る。
那色はすぐに立ち上がり、冷蔵庫の位置を思い出しながらキッチンへ向かう。水を取り出し、きれいなタオルを濡らし、軽く絞ってから戻ると羅華はベッドの上でうっすらと眉をひそめていた。
眠ったまま、苦しそうに小さくつぶやく。
「……あれ…?なしき、くん……?」
かすれた声。その瞬間、那色の動きが止まる。
羅華のまぶたがわずかに震える。だが完全には開かず、意識はまだ朧のままだ。
「……そうですよ。悪いと思いましたけど、勝手に合鍵使わせてもらいました」
そっと声をかけると、羅華の指先が、毛布の中でかすかに動いた。
「……どうして……?」
「連絡がなかったから、心配して来たんです」
タオルをもう一度額に当て、彼女の手をそっと包む。熱はまだ高い。意識が戻りかけたのは、ほんの一瞬の波のようなものかもしれない。
「……ごめんね……」
また、小さな声が落ちてくる。目を閉じたまま、うわごとのように。
「……迷惑、かけて……」
その言葉が、那色の胸の奥にまっすぐ届いた。まるで熱の中でも、謝ることだけは手放せないかのような声音だった。
「迷惑なんて思ってません」
那色は小さく笑いながら、そっと囁いた。