蜜味センチメンタル
「むしろもっと頼ってください。僕はあなたのためだけにいるんですから」
羅華は何も返さなかったが、指先にわずかに力がこもる。那色の手を、弱々しく握り返してきた。
「なしきくんが……一緒にいると……あんしん、する……」
ぽつりと、夢と現の境目からこぼれたその言葉に那色の胸がきゅっと締めつけられる。
言葉にならないほどの安堵と、切なさと、温もりが、一度に胸に押し寄せてくるようだった。
「……僕もです」
そう答えてから、那色はそっと羅華の手を握りなおした。
「風邪薬、常備してますか? 食事は……無理そうですね」
「うん……おなかすいてない」
「でも薬は飲まないと。ゼリーとかアイスとか、食べられそうなものを買ってくるので、待っててください」
「!や、やだ……!」
朧げだった目がぱっと開き、握った手を引かれる。熱に浮かされた羅華の瞳に、涙がいっぱいに溜まっていた。
「いかないで、なしきくん。いなくならないで……」
ぽろぽろと涙をこぼしながら懇願するその姿は、いつもの羅華とはまるで違っていた。
「薬は、家にあるから。ご飯もたべるから……だからお願い、いかないで。ここにいて」
那色は一瞬、息を飲んだ。
握った手が、ぎゅっと縋るように力を込めてくる。
その目には、涙があふれていた。
熱に浮かされた赤い頬、かすれた声。消え入りそうな瞳の奥にあったのは、ひとりが怖いという感情だった。