蜜味センチメンタル

くつくつと煮え立つ音が、静かな空間に溶けていく。

ご飯が柔らかくなってきた頃、卵を割って溶き、チューブの生姜と一緒にそっと鍋に流し込む。

その瞬間、ふわりとやさしい香りが広がった。どこか懐かしく、胸の奥をくすぐるような、あの匂い。

──……そういえば、お母さんが、よく作ってくれたな

喉の奥が少しだけ熱くなる。


那色は昔、今より体が弱かった。小柄で食も細く、すぐ寝込んでいた。

今思えば祖父母からの「後継者」としての期待が重くのしかかっていたのかもしれない。

それでも、寝込む日は嫌いではなかった。その日だけは、母のやさしさを独り占めできたから。

風邪を引いて起きられない日には、必ず母の存在がそばにいてくれたから。普段口にすることのない、病気の日の唯一の母の味。

それは、どれほど体が辛くても、心まで温めてくれるお粥だった。

「……」

蓋をして火を止めると、那色はそっと器によそい、小皿に小口切りの青ねぎを添えた。

再び寝室へ戻ると、羅華はちょうど、まぶたをゆっくりと開けたところだった。

「……なしき、くん……?」

「はい。起きられますか? 少しだけおかゆを作りました。たまごとちょっと生姜を入れたやつです」

那色は笑いながら器をベッドサイドに置き、スプーンを手に取ると、そっと彼女の上体を支えて起こした。


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