蜜味センチメンタル

「……那色くん、料理しないんじゃ……」

「僕だっておかゆくらいは作れますよ。子ども扱いしないでください」

少しだけ不満げに返すと、羅華はほんのわずかにくすりと笑った。

「はい。じゃあ、口あけて」

那色がスプーンで小さくすくい、ふうっと冷ましてから口元へ運ぶ。

そっと口に含んだ瞬間──

「……ん…」

羅華の目が、かすかに見開かれた。ひと呼吸置いてから、小さく呟く。

「……おいしい……」

その言葉に、那色は静かに微笑んだ。

「母がよく作ってくれたんです。僕が昔、熱を出したときに。……この味だけは、いまでもちゃんと覚えてて」

ふっと目を細めて、どこか遠くを見るように語るその横顔に、羅華は目を瞬いた。

「……お母さん、の……?」

「ええ。体が弱い人だったから手料理なんてほとんど食べたことなかったんですけど。これだけは絶対にちゃんと作ってくれて」

その瞬間だった。

羅華の目から、ぽろりと涙がこぼれた。

「……そんな、大事な味を……私に……?」

「え?」

「だって……それって、お母さんとの大切な思い出でしょ……」

那色は少しだけ驚いたように目を見開いたが、すぐにまた穏やかに微笑む。

「だからこそ、でしょ。僕がどれだけ羅華さんを大切に思ってるか、わかってくれました?」

羅華は言葉を失い、唇をきゅっと噛んだ。涙は拭おうとせず、そのまま頬を伝って落ちていく。

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