蜜味センチメンタル
病気で弱っている姿を隠すことなく、こうして隣にいる自分に頼ってくれている。
遠慮も気遣いもせず、めいっぱい甘えてくれている。それが嬉しかった。
心を許してくれていることが、こんなにも愛しく感じるなんて、知らなかった。
誰かのために何かをして――それだけで、自分のほうが救われる気持ちになる。
そんなふうに思えたのは、生まれて初めてだった。
(この人のためなら、何度でも、何でもしてあげられる)
義務感でも責任感でもなく、ただただ自然な気持ちとして胸にあった。
彼女が苦しければ寄り添いたい。
不安なら手を握っていたい。
笑ってくれたら、もっと笑わせたくなる。
彼女がいるから、自分は自分でいられる。
その想いは、どんな言葉よりも静かに、けれど確かに那色の心の中心に据わった。
──僕は……この人と、これからもこうして生きていきたい
まだその言葉を声には出せなかった。けれど、確信だけははっきりとあった。
それは、やがて訪れるべき未来の輪郭。
今はまだぼんやりとしていても、そこに向かって歩いていける気がしていた。
やがて器が空になり、那色はゆっくりとスプーンを置いた。
「……ごちそうさまでした」
小さくつぶやくように言った羅華の声に、那色は「どういたしまして」と笑って応えた。
そしてそっと毛布を引き上げ、彼女の肩をやさしく包む。
「薬飲んだら、少し寝ましょうか」