蜜味センチメンタル
雪を思わせる白い器に彩られた、クリスマス限定の前菜。キャンドルの炎を受けて、繊細な飾りつけがきらめいている。
ひと口を口に運ぶと、口の中でふわりと広がる香りに思わず目を見開く。
「……おいしい」
「でしょう? ここは祖父の代から付き合いのあるお店なんです。紫水家では大事な人を迎えるなら、ここだと決まっているんですよ」
さらりとした口調のはずなのに、その言葉は胸の奥に深く響いた。
“大事な人”――その響きが、料理の味よりもずっと甘く、熱を帯びて広がっていく。
フォークを握る指先に、わずかな震えが宿る。彼は何気ない調子で言っただけかもしれない。それでも胸の奥では、つい別の意味を探してしまう。
“紫水家で大事な人を迎える”。
それはただの言い回しなのに、どこか未来を示されたようで、やけに鼓動が落ち着かない。
「……羅華さん?」
那色が小首をかしげる。
「あ、ううん。なんでもない。見た目もすごく繊細で、素敵だなって思ってただけ」
慌てて笑顔をつくると、彼も満足そうに頷いた。
また次の皿が運ばれ、芳ばしい香りが立ちのぼる。フォークを動かしながら、羅華は気持ちを切り替えるように何気ない会話を持ち出した。
「そういえば今季のホワイトチョコレートのCM、すごく反響出てるみたい」
那色は丁寧な所作でカトラリーを置きながら、羅華の言葉に耳を傾けた。