蜜味センチメンタル
誰に聞かれるかもしれない外で、しかも記念日の席で込み入った話題を持ち出してしまった罪悪感に、頬がかすかに熱を帯びる。
けれど那色は気を悪くするどころか、グラスを軽く揺らして微笑んだ。
「大丈夫ですよ。この店は接待にもよく使われますし、防音も完璧です。どんなに込み入った話をしても外に漏れる心配はありません」
「そ、そう? よかったあ……」
安堵の吐息とともに、胸の奥のつかえがふっとほどけ、ようやく味をちゃんと感じられる気がした。
「それで発表会の件、蓮実さんはなんて?」
「うん。まだ大枠の相談段階ではあるけど、今回はもう少し規模を大きくしたいって。詳細はこれからだけど、春にかけたまたちょっと忙しくなりそう」
「ふうん……」
那色は軽く顎に指を当てて考えるふりをする。
「その企画、僕も参加しちゃおうかな。広報部長に直談判して」
「えっ?那色の部署とも関わりあるの?」
「ないですけど。だって蓮実さんばっかりズルいじゃないですか。僕だって羅華さんと仕事したい」
「ええ……ただでさえ忙しいくせに何言ってるの……」
呆れ半分で眉をひそめると、那色は悪びれるどころか楽しげに口角を上げた。
「でもほら、同じ仕事でしか味わえないスリルってあるでしょう?」
「……はい?」
一瞬、冗談か本気か測りかねて、手元のフォークを握る指先に力がこもる。