蜜味センチメンタル
「……何する気?もちろん冗談、だよね?」
手を止め、警戒心むき出しでじっと那色を睨む。
けれど彼は何も答えず、にこりと笑みだけを返してきた。
「……っ!」
その沈黙がかえって怪しくて、つい声を荒げてしまった。
「ぜっっったいダメだからね!」
「あははは!」
声を立てて笑い、那色は満足そうに肩を揺らした。
いつの間にか仕事の話も冗談に変わっていて、記念日の席に似つかわしい軽やかさを取り戻していた。
「失礼いたします」
ちょうどそのとき、最後の皿がそっとテーブルへと置かれる。
真っ白なプレートの中央には、繊細なチョコレートの文字が浮かんでいた。
『1st Anniversary』
キャンドルの炎がゆらめき、チョコの光沢に映り込む。それを目にした瞬間、胸の奥が甘い衝撃に包まれた。
「……これって……」
「サプライズ。一周年、おめでとうございます」
那色がグラスを軽く持ち上げ、真剣な眼差しを向けてくる。
「一年前の約束通り、今日を羅華さんと一緒に迎えられて……本当に嬉しいです」
その言葉に、頬が一気に熱を帯びた。
シンプルな祝いの言葉なのに、どこかもっと深い意味を含んでいるようで、視線を逸らすことができない。
「那色く……」
じわりと涙が滲み、視界が揺らぐ。
「……ありがとう。私も……すごく嬉しい」
掠れるように返すと、彼は満足げに目を細めた。