蜜味センチメンタル
「つーか、身内の店をデートに選ぶなよ。しかも貸し切りとか……俺はいったいどういう顔でここに立ってたらいいんだ」
「うるさいなあ。今日は初心に戻ってみたかったんだよ」
那色がさらりと答える。その声音には、恋人と過ごすこの一夜を格別なものにしたいという思いが何気なく滲んでいた。
「ったく……わがまま放題は相変わらずだな」
そういいながらも、大和はふっと目を細め、磨いていたグラスを静かに置いた。
「……でもこれで、ひとつ肩の荷が下りたよ」
「はい?」と怪訝そうに首を傾げる那色に、大和は視線を那色へ、そして羅華へとゆっくりと向ける。
「お前があのままひとりでいるのが、ずっと気がかりだったんだ。でも、羅華ちゃんがいればもう……大丈夫だな」
羅華は不意に胸の奥が熱を帯び、言葉を失う。大和は穏やかな笑みを浮かべたまま、真っ直ぐに頭を下げた。
「羅華ちゃん。こんなどうしようもない弟を受け入れて、一緒にいてくれて、本当にありがとう」
胸の奥がきゅっと熱を帯び、息が詰まる。思わぬ言葉にどう返せばいいのか迷いながらも、自然と笑みがこぼれていた。
「……私こそです。那色くんと一緒にいられて、幸せです」
頬を赤らめながら返すと、隣の那色と目が合う。視線を交わしただけで、互いの胸に同じ熱が広がるのを感じた。
そんな二人の様子を見ながら、大和はふっと目を細め、思い出したように口を開く。