蜜味センチメンタル


「…羅華さん?」

羅華を見下ろす美しい顔。いつもはきっちり整えられている髪が無造作に垂れ、長い睫毛の影からダークブラウンの双眸がこちらを覗き込んでいる。

「……」

「夢見が悪かったみたいですね。うなされてましたよ」

「……」

「おーい。聞こえてます?」

「…ぇ、」

寝ぼけた頭では、目の前の状況がうまく呑み込めない。

それでも少しずつ昨夜の記憶が戻ってきて——

「わああ!」

反射的に叫び声を上げながら、絡められていた那色の手をバッと振り払う。かけられていた毛布を引っつかんで頭から被り、思いきり距離を取った。

その反応を面白がるように、那色は喉の奥でクツクツと笑った。

「おはようございます。あ、でももう昼前なんでこんにちは?かな」

「なっ…なな、」

「寝顔眺めてたら急に唸り出すからちょっと焦りました。一体どんな夢見てたんですか?」

「言わないよ!ていうかいつから見て…」

「さあ…結構見つめてたんで30分くらいですかね」

「!?」

絶句する羅華に、那色は少し身を乗り出して上目遣いで覗き込む。

「あんまりにも無防備なんで悪戯してやろうかと思ったんですけど、ちゃんと我慢しました。僕えらいでしょ」

「っ、〜!」

一瞬で羅華の顔は赤く染まり、近くにあったクッションを思いきり掴んだ。

「え、偉くない!っ、人の寝顔30分も眺めてる時点でアウトだから!」


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