蜜味センチメンタル
「付き合うまで許してくれなくても、毎週土曜にはここに来ますから」
「はい!?」
「だってそうでもしないと、接点作れないでしょ」
「…私の都合は…?」
「ん?」
「……」
那色に撤回する気がないことは言わなくても分かった。
本当に自分勝手だ。それに何も言い返せない自分も同じ。
「昨日といい今日といい、僕の興味を引くのが本当に上手いですよね、羅華さんて」
「…なにそれ、」
「ま、僕を本気にさせた代償だと思ってこの際諦めてくださいよ」
「おっ…横暴…!」
「それとも観念して付き合ってくれます?そうしてくれた方が合法的に押し倒せるんで僕としては嬉しいんですけど」
「ダメだよ!?」
「じゃあ来週の日曜日、デートしましょうか」
「聞いてるっ?」
何か「じゃあ」なのかさっぱりわからない。ただ分かるのは、那色が羅華の意思など聞くつもりは更々無く、自分のやりたい事を押し通そうとしていることだけだ。
「遊園地、水族館…初デートですしもっと特別感出す為に高級店でランチ?羅華さんはどうしたいですか」
「いや…」
「羅華さんのしたいこと教えてください。大抵のことなら叶えられると思うので」
「……」
その余裕は一体どこから来るんだろう。我が儘で、子供っぽくて、自分勝手。なのに時折、驚くほど大人びた表情を見せる。
——まるで、無理に背伸びしてる子どもみたい…
不安定で、危なっかしい。だけど目を離せない。
そもそもただの大学生がさらりと高級店に行こうだなんて言えるだろうか。羅華自身が苦学生だったこともあり、そのあたりはよく分からない。
そもそも、いち大学生が高級店でのランチをさらっと口にできるものだろうか?羅華自身が苦学生だったため、その感覚が分からない。
実家が裕福?それとも、年上の女性たちから貢がれてきた?
那色の姿を見る。服装はファストファッション、リュックは機能性重視の定番ブランド。派手でもなく、妙に落ち着いてるわけでもなく…つまり、「普通の大学生」。
なのに、どうしてこんなにも目を引くんだろう。
那色という男が、ますます分からなくなる。