蜜味センチメンタル
それを言うや否や、那色がグッと顔を寄せてくる。
「本当に?二言はないですね?」
距離の詰め方に勢いがあって、思わずたじろぐ。そんな那色に、羅華はわずかに眉を寄せた。
「そんな騙し討ちみたいなことしないよ。興味が湧いたから行きたいと思ったの。…だからそのURL送って。場所とか服装とか、確認したいし」
さすがにドレスコードはないだろうが、TPOをわきまえた格好で行かなければ恥をかく。そう思ってスマホを取り出したその時、那色がどこか含みのある笑みを浮かべていた。
その顔に嫌な予感を感じ、羅華はじとりと視線を送る。
「…なに」
声を落として問いかけると、那色は形のいい唇を開いて言った。
「いやあ、羅華さんが食い意地張ってて良かったなって思って」
「っ!そういうこと言うからすぐに返事したくなかったんだよ!」
何でわざわざそういう嫌味を混ぜてくるのか。ムキになって言い返すと、那色はけらけらと笑う。
そしてそのまま、自然な動作で手を伸ばしてきた。
「ごめんなさい、けどすごく嬉しかったから。つい誤魔化そうとして揶揄った」
指の背でそっと頬を撫でる。からかうような笑顔ではなく、どこかあどけない、素直な笑みだった。
「待ちきれないくらい楽しみになりました」
「…ほんとにスイーツ好きなんだね。意外」
「…ねえ、それ素でやってます?それとも計算?」
「なにが?」
「…無意識か…タチ悪いな」
「なっ…!また悪口ばっか、」
「全部羅華さんのせいでしょ」
睨みつければ、那色はしれっと言い返す。
「上げたり下げたり、僕を振り回すから。この悪女」
「はい!?心外なんだけど!」
「分かってないならもういいです。ほら、外に食べに行くんでしょう?お腹空いたんで、早く着替えて準備してくださいよ」