蜜味センチメンタル


私服に着替えたあと、2人は徒歩数分の場所にあるチェーン系のカフェへと足を運んだ。

昼時ということもあって店内は混雑していたが、なんとか空いていた窓際のカウンター席に並んで腰を下ろす。

先に提供されたオリジナルブレンドのコーヒーを口にしながら、羅華はぼんやりとガラス越しの通行人を眺めていた。

すると、不意に隣から声がかかる。

「羅華さんって、休日は何して過ごしてるんですか?」

那色は自分の前にカップを置きながら、脚を組んで、美麗な笑みを浮かべている。

「どうしたの、急に」

怪訝そうに顔を向けると、那色はさらりと答えた。

「いえ、趣味とか分かれば、今後のデートの参考になるかなと思いまして」

「あ、そう…」

もはやデートすることが当然の前提であるような言い方にも、いちいちツッコむ気力がもう湧いてこない。

羅華は小さくため息を吐いて、カップにまた口をつけた。

「でも残念ながら面白いことはしてないよ。疲れて寝てること多いし、平日のごはんの作り置きしたり、それくらい」

「作り置き?」

「たまにね。昼は外食か社食だし、夜も一人分作るくらいなら買ったほうが楽で安上がりだったりするから」

帰宅が遅い日は、夜を抜くことも多い。学生時代の節約習慣が抜けきれず、面倒なときは“何も買わない・食べない”という選択を今もしてしまう。

それが貧乏くさいという自覚はある。だからこそ、あまり他人には話したくないことだった。

「ふーん、そうなんだ」

那色は、いまいちピンと来ていない様子で軽く相槌を打つ。

「那色くんは料理しないの?」

「そうですねえ。したことないです」

「そうなの?じゃあ普段のごはんはどうしてるの?夜はバイト先で賄いって聞いたけど、バイトない日もあるよね」

「普通に家で食べてますけど」

「え、じゃあ那色くんて実家生?」

「まあそんな感じです」

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