蜜味センチメンタル
「あ…ごめん。もしかして那色くんて友達いない…?」
悪気なく放った言葉だったが、那色は明らかに眉をひそめた。
「羅華さんあなた…危機感と一緒にデリカシーもどっかに置き忘れてきたんですか?」
「は、はあ!?」
思わず身を乗り出して声を上げたものの、那色は相変わらず涼しい顔。
そのせいで、羅華だけが周囲の注目を浴びてしまい、居たたまれずに椅子に縮こまる羽目になった。
「危機感しかないわよ!第一、那色くんにだけは言われたくな…」
「友達っていうのとは違いますけど、それっぽいのはいますよ」
「ねえ私の話聞く気ある?」
反論しかけた羅華を無視して、那色は平然とバケットサンドにかぶりつく。テーブルには他にも何皿か料理が並んでおり、那色が意外と食べる方なのだと羅華は今さらながら気づいた。
一向に会話を続ける気配のない那色に怒るのもバカらしくなり、羅華はパスタの乗った自分の皿に手を伸ばす。
「…それっぽいって、どういうこと」
気になって尋ねると、那色はもぐもぐと口を動かしながらほどなく答えた。
「昔から何かと一緒にいることが多いというか。いるのが当たり前というか」
「それを友達っていうんでしょ。私なんかに絡むよりその子といる方が有意義だと思うけど」
「や、向こうもそんなの望んでないんで。どうせ今も女のところに入り浸ってますよ」
「…へ?」
「彼、僕以上にタチの悪いヒモ野郎なんで」
「……」
フォークを止めて、羅華は無言で那色を見つめた。
喉まで出かかったツッコミをぎりぎりのところで飲み込む。
——それってつまり、同族嫌悪ってやつでは…?
そんなことを考えていると、那色がじとっと視線を寄越す。
「…今なんか失礼なこと考えませんでした?」
「い、いや?そんなことは」
口元に笑みを浮かべ、誤魔化すようにパスタを口に運ぶ。
——でも、事実だし
心の中でそう付け加えながら。