蜜味センチメンタル
「じゃあ、羅華さんの初めての相手って誰なんですか」
「ええ…」
反応するところはそこなのかと思わなくない。けれどもう今更隠すこともない。そう思い、羅華は諦めたように肩を下げた。
「付き合ってた先輩だよ。当たり前じゃない」
そう簡単に体を許すわけない。人を何だと思ってるんだ。
そう思いつつ見返せば、那色は何とも言い難い表情をしていた。
「なにその顔。どういう感情?」
「羅華さん…その人と付き合ってたのは少しの間って言いましたよね」
「そうだね、数ヶ月くらいかな。それがなに?」
「別に。随分と手の早い男だったんだなって思っただけです」
「手が早いって…」
——それを君が言うの…?
そう反論しようとしたが、那色の機嫌が明らかに悪くなったのを感じ、言い淀んでしまった。
「なんでそんなに怒ってるの」
「だってその男にはすぐやらせるくせに、僕のことは拒否するから」
「まっ…またそうやって!…ていうか、そんなの当たり前じゃない。先輩とは何年も片思いしてからの交際だったわけだし。那色くんと会ったのはつい先週でしょ?」
「だったら僕がその頃に会ってたかったです」
那色は不貞腐れたように唇を突き出す。
相当面倒臭いはずなのに、それよりも先に可愛いと思ってしまう。顔の造形の良さとは、恐ろしい。
「そうは言うけど…那色くんその時は小学生だよ?さすがにそんな小さい子は異性としては見れないよ」
「別に付き合うって形じゃなくても邪魔ならいくらでもできます。実際大和にだって…」
「大和さん?」
その名前を口にした途端、那色は口を閉じる。大和の事を言ってしまったのは、彼にとっても予想外だったようだ。
「どうして大和さんが出てくるの?昔からの知り合いだとは聞いたけど、一体どういう関係なの?」
「……」