蜜味センチメンタル
聞いてしまった以上、気になって仕方がなかった。
思いきって尋ねると、案の定那色は難しい顔をして黙り込んだ。そこには答える素振りは微塵にも感じられない。
「私のことばっかり話させて、何も言わないのはずるいよ。…来週のデート、行くのやめるよ?」
言い終えてすぐ、しまったと思った。
大人気なかった。脅しみたいな言い方だったかもしれない。一瞬、あっさり「じゃあいいです」なんて返事が脳裏をかすめ、胸の奥がちくりと痛んだ。
——ないよ、そんなの…
そう自分に、言い聞かせる。
那色は羅華を一瞥し、サンドイッチの残りの一口を豪快に口に入れた。その間羅華は目線の行き場をなくしてそのまま那色を見つめていた。
やがて降参したかのように那色は水を飲み干し、コップを置いた。
「…兄弟、なんですよ。僕達」
そう言った口調は、ひどく嫌そうだった。
「…え、え!?そうなの!?」
声を上げると「うるさいです」と冷たく突き放される。しかしそんな事も気にならない程に、羅華は驚いていた。
大和の顔を思い浮かべるが、お世辞にも似ているとは言い難い。那色が儚げで中性的な美貌に対し、大和は凛々しく彫りの深い精悍な男前。
ただそれを言葉にして言うのは、あまりに非常識な気がした。
羅華には兄弟がおらず、普通どれくらい顔が似るものなのか分からない。元彼とその妹も似ていなかった気がするが、異性の兄妹だったので比較ができない。
けれど顔の造りさえ無視してしまえば、那色があれだけ心を許した態度を取るのも、子供の頃から知っているといった大和の言葉も、全て辻褄が合っていた。